鳴海貴斗-前編-

昨年青ヶ島に移住することを決意し、なんと半年もせずに青ヶ島に移り住んだ「なるみん」こと鳴海さんにインタビューしました。移住に至るまでの道のりと実際に住んでみて感じた青ヶ島のギャップとは_


インタビュアー:まずはお名前と年齢をお伺いしてもいいですか。

鳴海さん:名前は鳴海貴斗(なるみたかと)で、年齢は20歳です。(現在は誕生日を迎え21歳!)
一応、大学生で、今は休学してます。

インタビュアー:ありがとうございます。青ヶ島に行くことになったきっかけは何だったんですか?

鳴海さん:大学1年生のときにお世話になった大学の教授の先生からの勧めで、青ヶ島についての卒業論文を読ませていただいたことが最初のきっかけで、その時に青ヶ島っていう存在を初めて知って、とりあえずすぐに行ってみたいと思いました。
元々地域創生とかに興味関心があったのと、日本一人口が少ない青ヶ島村っていうものを知って、人口が一番少ない村なりの文化だったり、経済の仕組みだったり、調べていくうちに、住んで見て知りたいなと思って、まず2022年、去年の3月に青ヶ島村に行ってみたのが始まりですね。

インタビュアー:そうなんですね。ちょうど1年ぐらい前だと思うんですけど、最初に来たときはご旅行みたいな感じだったんですか?

鳴海さん:友人と二人で来たのですが、観光というよりも、島民、島の人と話して実際の暮らしを知りたいって思って、行く前にまず青ヶ島ちゃんねるさんにコンタクトをとって、青ヶ島に住みたいっていうことと、その時期まだコロナ渦で、離島だと状況的にどうなのかっていうことをやりとりさせてもらってから行きました。それで加絵さんが起点となって島民さんに繋いでくれました。

インタビュアー:やっぱり人起点で、一度島に足を運んでみてっていう感じだったんですね。

鳴海さん:青ヶ島村の島民の方がどういうふうに考えてるかについて興味があったので、人づてで色々な人と会って、という流れでしたね、最初は。

インタビュアー:最初に読んだその卒業論文のどういったところに惹かれたというか、引っかかったのでしょうか?

鳴海さん:人口が一番少ない村っていう観点が一番最初に僕はあって、それで人数が170人くらいしかいないと聞いて、170人でも村としては回るのはすごいと思いました。村でも1万人いるところが当たり前だったりしますし、八丈島でも7000人、青ヶ島は170人で一つの自治体で維持されているのって普通に考えたらすごいんですよね。

インタビュアー:170人で自治体として回ってる面白さがちょっと気になったみたいなところなんですかね。

鳴海さん:2位が300人とか350人とかだったんで、1位だけ突出してるんですよね。絶対これは何かある、ここで何か面白いこと起きてるでしょと思って、実際住んでみたって感じですね。

インタビュアー:ありがとうございます。最初に去年の3月にご友人と足を運んでみて、実際の青ヶ島はどうでしたか?

鳴海さん:青ヶ島の人は意外と東京の人と変わらない、というのが多分一番最初の所感です。地方の方のイメージって視野が狭かったり、結構村っぽい文化があったりすると思ってたんですけど、僕が会った青ヶ島の方はあんまり東京人と変わらない感じの方が多くて。それこそ佐々木加絵さんとか全然東京に長くいて、今YouTuberやられてる方なんで、結構視野が広かったりして、なんか村っぽくないんですよね、村の人っぽくない。考えが自由な方が多かったというイメージでしたね。

インタビュアー:最初に来たときはどれくらい滞在してたんですか?

鳴海さん:その時は本当に色々な島民の方とお話したかったので最低でも1週間はいたいと思ってました。実際8日いましたね。

インタビュアー:何人の島民の方と会ったんですか?

鳴海さん:多分20人ぐらいですね。役場に行ったり、お家にお邪魔させてもらったり、またその方が人を紹介してくれて…みたいな感じで色々な人とお話をしましたね。

インタビュアー:単純に1週間の滞在で20人に会うっていうのもすごいですけど、分母を考えると20人ってだいぶすごいですよね。

鳴海さん:そうですよね、170分の20なんでもう10%以上ですもんね。

インタビュアー:最初の滞在で特に印象に残ってることはありますか?

鳴海さん:印象に残ったのは空き家が無いっていうこと。島の一つの特徴として、強風や塩害、湿度の高さなどもあって空き家が本当に無いんですよ。これは実際に青ヶ島に行って初めて理解して、確かにこれは厳しいなと思いました。
他の地方の村って結構空き家が多くて移住者も募集してたりするので。
そのとき村長さんともお話させていただいて、移住したい人が居てもすぐに住む場所は無いというのがずっと青ヶ島の課題なんだと。

それで僕は住みたいけど住む場所がないっていうときに、加絵さんが広江寛さんを紹介してくれて、家に空き部屋があるよってことでシェアハウスいいねってなって。これは運命を感じるじゃないですか。これは面白いなと思って。

インタビュアー:最初の滞在でそれを感じたっていうところなんですね。そこから移住しようってなったのはいつ頃なんですか。

鳴海さん:いやもう行く前から移住できるならばしたいなと思ってました。絶対ここ面白いんで移住してみたかったんですよね。170人の島でYouTuberさんもいて何か面白いことが起こり始めてるわけで、移住できる場所があったらなぐらいの感覚でいたんすけど、その中で青ヶ島に1週間以上いることによって、その関係性もできてきてなんか面白いなと思ってきて実際住んでみたって感じですね。

インタビュアー:実際住み始めたのはいつからですか。


鳴海さん:そうですね。4月に一度帰って大学を休学して、シェアハウスの準備もあったので実際に住み始めたのは去年の7月からって感じですね。

インタビュアー:シェアハウスも含めてなんですけど、移住して半年ぐらい経って島の暮らしはどうですか。

鳴海さん:島の暮らし、そうですね。普通の田舎のイメージだとすごい時間がゆっくり流れてるんじゃないかとか、住んでる人たちものんびりしてるのかと思っていたんですけど、全然島時間とかって感じではなくて、すごい皆せっかちなんですよね。
とにかくみんなずっと動いてる、みたいな。住んでる僕はすごいゆっくりに感じるんですけど、実際住んでる人は結構時間の流れが早いように感じてて、結構みんなが、僕が昔思ってた島の人たちの暮らしではなくて、僕は結構早いなってイメージでしたね。

青ヶ島村の人口増加っていう地域創生的な観点と、もう一つ、僕自身ここの青ヶ島に来て、修行したいなって気持ちもあって。色々な自分のスキルを上げることだったり、英語の勉強とかプログラミングの勉強ももっと突き詰めたいなと思って。移住したら、変なところに遊びに行かないし、集中できる環境ができるかなと思って来たので。そしたら青ヶ島の人たちが時間時間で仕事も生活もこなしていて。というか島では仕事と生活、暮らしが直結しているのも感じて。僕としてはのんびりっていうより修行の気持ちで来たのでそういう島の人たちの中での暮らしは良い環境というか、合ってたって感じですね。

インタビュアー:予想外に修行の場に適してたんですね。

鳴海さん:そうですね、これは意外でした。でもその中でもゆっくりした時間もやっぱり流れるんですよね。夜とか静かなのも良い。

インタビュアー:では今は普段の生活としては、今おっしゃっていた英語とかプログラミングの勉強をしながら、過ごしているんですか。

鳴海さん:そうですね、あとオンラインで仕事をしてて、お金を稼いでるみたいな感じですね。青ヶ島で暮らせる最低限の暮らしのために仕事をしてるって感じです。

インタビュアー:どんなお仕事をされてるんですか。

鳴海さん:僕がプログラミングとかして、そういうプログラミングの中で、海外の事例を日本の企業さんにまとめて、情報提供するっていう、マーケットリサーチっていう役職なんですけど、そういうのをやらせてもらってます。

インタビュアー:それは完全にオンラインですか。

鳴海さん:完全に、フルリモートでやってます。

インタビュアー:すごいですね。

鳴海さん:すごく嬉しいですよね。

インタビュアー:移住する前は神奈川県にお住まいとのことですが、生まれた時からずっと神奈川東京あたりで過ごしてきたのですか?

鳴海さん:元々小学校東京だったんですけど、うちの親が転勤が多くて、福岡に住んでいたこともあったりで、何回か転校はしたんですよね。

インタビュアー:でも今お話聞かせてもらっている感じだと、結構都会的な街に暮らしてきた印象です。

鳴海さん:そうかもしれないですね。都会の方の暮らしにいすぎて、その反動でどっか地方に移住したくなった気持ちはあるかもしれないです。

インタビュアー:すごいですね、それで移住してあまり東京とギャップ感じてないですって言えるのって結構すごいことだと思います。

鳴海さん:そうですね、どっちかって言うと人単位は変わってないんすけど、やっぱり周りの自然の多さはやっぱ青ヶ島すごいなと思っています。少し歩けば人が住んでいないありのままの自然があって、すぐにそういうところに行けるのも強いですし。でもその一方で、人はどうかって言うと村の人、島の人ではないようなキビキビした人が結構多かった感じですかね。

インタビュアー:本当になんか理想的と言ったら安直かもしれないですけど、いいですね。田舎的な自然もあるし、でものんびりしすぎてるわけでもないっていう、適度にメリハリがあるような感じなんですね。移住者から見て青ヶ島は他にどのような魅力がありますか。

鳴海さん:青ヶ島村は魅力あるなと思ったのが、人が少なすぎて、産業とかであれもこれもできそうっていうものを誰もやってなかったりするんすよ。なぜかというとその他で既に産業をやっているからっていうことなんですけど。原石がめっちゃ転がってて、誰も原石を拾わない理由が、みんな違う原石を磨いてるからっていう、そんなイメージがありますね。

インタビュアー:それをこれからどうしていくのが正解なのでしょうか。

鳴海さん:そうですね、その原石をどういうふうに見せていけるのかなとか。例えば青ヶ島ちゃんねるさんだったら自然の景色とか船の様子とかっていうその原石をYouTubeっていうカメラでいい感じに見せてあげたりとかあるじゃないですか。一応磨いて。そういうふうな青ヶ島の魅力、眠ってる魅力があると思って、それをちゃんと見せてあげることが、結構多くあるのかもしれないなと思うので、それができればいいなと。

インタビュアー:例えば、鳴海さん的に青ヶ島の好きなポイント、推したいみたいなところはありますか?

鳴海さん:好きなポイント、推したい…青ヶ島の焼酎とか、独特の文化なんですよねやっぱり。独自の酵母で作っている青酎っていう焼酎があったり、青ヶ島独特の郷土料理とかあったりするんですよね。クジラヨっていう島の人が特に好きな魚だったり、日常的に島の人が食べている明日葉とか、青ヶ島で独特の食文化が成り立ってるのを、東京とかに輸出したいなと思いますね。好きなポイントはそこですね、青ヶ島独特の文化があることですね。

インタビュアー:お話を聞かせてもらってると、特に食とか今おっしゃったみたいにいいものがたくさんあるので、もっとこっちにも届いたらいいのにと思うことはありますよね。

鳴海さん:そうですね。あと好きなポイントは、あんまり整備されてないんですけど、地熱があって。青ヶ島は火山の島なので、人が住んでないところに地熱があるんですよね。僕が一番好きなのは、その近くに地熱で熱せられたサウナがあるんですけど、サウナで整った後に、春とかちょっと肌寒いときに、地面に寝転がって寝るのが好きなんですよね。夜は星も月も綺麗で、虫の鳴く声しか聞こえないなかで、下が温かくてホカホカしてるみたいな。その瞬間は僕がすごい青ヶ島に来て幸せだなと感じるところですね。

インタビュアー:いいですね、すごくアオガミライっぽいエピソードをいただけた気がします。

鳴海さん:アオガミライっぽいかわかんないですけど、青ヶ島に住んで自分が幸せだなと感じるときは、サウナに入る前にソーセージとかジャガイモとか卵を地熱の調理ができるところ“ひんぎゃ”と言うんですけどそこに入れておくと、サウナに入って出た頃に出来上がるんです。それを食べながらあったかい床で、見上げれば満天の星が見える。僕としては一番好きな時間です。しかもその場所が池之沢なんですけど、僕のケータイ繋がらないんですよ。インターネットを遮断しながら自分の独自の世界を築けるんで、人もいないですし、幸せですね、その時は。そこは好きですね。

インタビュアー:いいですね、観光マップには載っていない良い過ごし方ですね。
移住して半年暮らしてて、逆に困ったこととか大変だったことみたいなのは何かありますか。

鳴海さん:そうですね、僕の場合はそんな大変ではないと思う。ちょっと変わったことは、夜ご飯を作ろうとしたら、事前に計画しとかないといけないんですね。事前に食材を準備しておかないと作れないんですよ。例えば今日オムライスが食べたいと思っても、スーパーやコンビニでいつでも卵が買える環境ではないんですね。
青ヶ島には一応商店があるんですけど船が来なければ棚はスカスカになりますし、品揃えも都内のスーパーとは違いますよね。買い溜めできるものはネットで注文したりとかして事前に計画しながら夜ご飯作らないといけないんで、そこは大変かなと思いますね。
あと僕の仕事はあまり関係ないですけど、リモートワークでも月に何日かとか必ず出社しなきゃいけない人だと大変かもしれないですね。

船が出る出ないとか、ヘリが取れる取れないとか。9名しか乗れないヘリコプターなので、急に呼び出されたりしたら厳しいかもしれない。でも僕の仕事の場合は別にどこに住んでても、どこの場所にいても仕事ができるので、全然何とも思わないんですけど、大変だなと思う人はいそうですよね。

食事も移動も別に僕は大変だと思わないんですけど、大変だと思う人はいるなと思います。なので大変なことはありますかって言われたら僕自身はないんですけど、多分他の人は大変だと思うところありそうですねってことはよく言いますね。

インタビュアー:鳴海さんはすごい青ヶ島の生活に向いてる感じなんでしょうね、今の状況的にも。

鳴海さん:そうですね、フリーランス的な、フリーでインターネットがあればどこでも住めるノマド的な人だったら全然大丈夫かなと。